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10月1日

 晴れ、8810km、195km、10−30度
昨日、心配していたことが当たってしまいました。いつものように出掛けに話し掛けられて、少し遅くなってしまいましたが、おじさんにはクリップスって言われたので、違う違うチャレンジドだって言いました。それでも、おばさんも、おじさんも、いい出会いができたっていってくれました。
彼らに別れを告げて、工場が併設されているガソリンスタンドに行きました。後ろにとまった黒人の上品そうな女性が、日本人かって聞くので、そうだって言うと、いろいろ質問をしてきました。新聞のコピーを見せて読んでもらいました。神がついてるから、大丈夫って、言ってくれました。
  10時に工場が開くというので待っていましたが、30分待っても開かないので、StLouisへ向けて走り出しました。この街の高速道路がまた複雑で、ちょっと迷ってINT55に乗りました。北へ急ぎます。走り出してすぐに鉄橋を渡るとArkansasに入りました。周りは見渡す限りの畑、走っても走っても畑ばっかりです。退屈する道ですが、だんだんと大きくなっている音と、昨日の音が気になってピリピリしながら走らせていました。
 12:20 8720kmあたりで、ハンドルに細かい振動が出てきて、それがだんだん大きくなってきました。ものすごい音と共に何かが欠けたようです。すぐにクラッチを切って減速。恐る恐るクラッチを繋ぐと、さっきまでの振動と音がうそのようにスムーズに動いています。すぐに、何が壊れたか頭の中がフル回転しました。いろんな条件から考えられるのはプロペラシャフトの取り付けボルトではないかと結論を出して、その対策を考えました。
  とりあえずこのまま進むには、あまりにも危険で故障個所を大きくしてしまう恐れがある。すぐにでも、何とかしなければ。今手持ちの道具では足りない。5分ほど走ると、また音と振動が繰り返してきました。始まったな、もう一本緩んだかな?と、また減速。どういう条件で走るのがいいか分かっているので、負担がかからないような運転を心がけて、止まるかもしれない恐怖と闘いながら、故障個所を大きくしないような慎重な運転が1時間続きました。
 スタンドのあるランプを探しましたが、なかなかなくて90kmも走ってしまいました。ようやくHayti と言う所にスタンドを見つけ、工場を探しましたがFOODコーナーはあっても、工場が併設されている所はありません。とりあえず、ガソリンを入れて(ガスもぎりぎりでした)、お金を取りに来てもらおうと、お店の中に手を振っていると、無精ひげを生やしたおじさんが出てきてくれました。その人が持っていってくれると言うので渡して、工場も探していることを伝えると、ちょっと待ってろっていろんな所に電話してくれました。留守番電話に入れたから、中で待ってるかって言うので、バイクから降りてそうしました。
  結局、電話は返ってこないので、今日(日曜日)はここで泊まって明日、バイク屋に行ったほうがいいって。自分でもそうだなと思って、そうするって言うと、僕の下手な英語をよく聞いて理解してくれて、目の前のモーテルに電話してくれるは、僕が質問を受けて、へたくそに話をしていると助け舟を出してくるは、モーテルに行くのに高速道路を横断しなければならないんだけど、ずっとついてきてくれるは、おまけにモーテルのおじさんに、しっかりバイクを見張るようにいってくれるはで災いの中にも、とってもいい出会いができました。
 モーテルにチェックインした後、もう一度スタンドのFOODコーナーへ行って話をしました。今日ばかりは、英語がうまくないのが良く思えました。彼の名前はJames、47歳もう、既におじいちゃんで一日1000km近く走るトラックの運転手です。明後日にはワシントンDCへ行くそうです。
今日のモーテルはcomfortinnのハンディキャップルーム。初めてのシャワーチェアーつきの部屋です。じたばたしても仕方ないので、部屋を調べた後はゆっくりルートでも作ります。明日は早くから工場が開くと言うので一番で行くつもりです。体も神経もくたくたに疲れました。


  【写真説明】 上から
「出掛けに話し掛けてきた、おばさん。自分で刺青を入れるそうです」
「ミシシッピーとアーカンサスを繋ぐ橋」
「ずーーーっと、この風景」
「強力に優しい助っ人James」
「のぞき穴が下にあるドア」
下3枚「バスルーム」



10月2日

 晴れ、???km、???km、10−30度
今朝は5時から目がさめてしまい、しばらくベッドの中でぐだぐだしていましたが、荷物を片付けはじめました。昨日の夜、じょくそう(床ずれ)の治療をしました。大きさは1cm×4cmが1箇所、2cm×1cmが1箇所尾骨の左右にあります。出血と浸出液が出ています。少し大きくなってしまいました。
フリーの朝食を食べに行って、昨日話していたオートバイ屋に電話してくれるように言うと、マネージャーがまだ来てないからすこし待ってろって言われて待ってましたが、一向に来ないので買い物にスタンドまで行って返ってきてから、もう一度催促すると、電話番号は分からないから直接行ってくれと言われました。昨日の約束とぜんぜん違うじゃんと思いながらも、時間がもったいないので走り始めました。
音と振動はとりあえず落ち着いています。しばらく走ってもバイクが並んでいる所はありません。全く嘘ばっかり。小さな街に出たので、おじさんに聞くと1マイルほど戻った所に小さなバイクやがあるって教えてくれました。行って見ると確かにありました。おじいさんが車を洗っています。もう8時50分なのに(昨日のマネージャーの話だと8時開店といっていた)、おじいさんに聞くと9時に開くって。確かに9時丁度に若者が四駆で来ました。
 訳を話して、とりあえずプロペラシャフトを点検してもらいましたが、大丈夫でした。またここで新しい条件が出たので頭を動かしました。と言うことは、デフの中かそれとも逆のミッションからの取り出しぐちのベアリング、その先のクラッチ。ますます大変なことになったと思いました。
彼はこのさき50MILくらいにあるSiketonにはおっきなバイク屋があるのでそこに行けっていうし。9:15御礼を言って走り始めました。INT55 NORTHに乗ってしばらくは問題なく走っていましたが、20分もしないうちにまたおかしくなってきました。ブーンと言う音と振動が激しくなって、やばい。バキバキバキ、また何事もなかったように走っています。どうもクラッチに何か絡んでる感がしました。またしばらくすると……の繰り返しで、一度は完全にクラッチが切れてしまい万事休す。
時速5kmくらいになってハザードをつけて止まりかけると、また復活して、そのうちクラッチが切れなくなりました。クラッチが切れないだけで、すごく調子がいいです。音も静かになりました。とりあえずSiketonまではこのままでいいとして、ランプを降りたらどうしよう。信号が赤だったら。止まって人に道も聞けないしと心配事が次から次へと……そうこうしているうちに、また音が出始めました。もうだめかなって思ってた矢先にSikeston next Rightの表示が、やった。
 待てよ、どっちに行けば良いのかな?右か左か。右なら赤信号でも曲がれるからと、最初は右に曲がりました。1MILほど走っても、それらしいホンダは無いし、どんどん寂しくなります。無理やりミッションを一つ落として車が来てない時にUターン。なんせ車が止まればエンジンも止まってしまい、クラッチが切れないので再スタートはできません。押しがけができれば良いんですけど。
今度は高速をはさんで反対側をしばらく走っていると、ありました。赤い看板に白いHONDAの文字。うれしかったなー。でも、曲がろうとすると対向車。またしても少し先まで行って、Uターンをしてうまく店先まで来ました。ブレーキを徐々に強くかけていくとノッキングをおこし、エンジンが止まると同時にバイクも止まりました。11:30。約2時間の戦いでした。思わずため息が出ました。
しばらくバイクの上で呆然としていると、メカニックの人が中から出てきたので、事情を説明すると中に入っていって話をしていました。ここではできないので30MIL先のCaoe Girardeuの街にあるディーラーへ行けと言ってきました。もう目の前真っ暗です。このバイクは確かに走ってここまで来たけど、,こういうわけでクラッチが壊れてしまってるので、この先には進めないんだ、バイクから降りて店に入って、若い男の人に説明しました。あまり,いい返事はなかったのですが、お願いをしていると店の奥さん(後から経営者だと分かった)が来て、そうしたら色々考えてくれて、月曜日はディーラーは休みなので、バイクをディーラーの工場まで運んでおいて、あなたは近くのモーテルに泊まって朝一番で,ディーラーに電話して、ピックアップしてもらって工場に行きなさいって。すぐにご主人のJerryに電話して1:00に運んでくれる段取りをつけて、のどが渇いただろうってコーヒーがいいかコーラがいいかって、本当に嬉しかった。
 丁度昼時になってしまったので何か食べるかって聞かれたんだけど、午前中のことで神経を使いすぎて、おなかは全然すいてませんでした。それでも,何か頼めって言うので奥さんEstelleと同じ日本でいうチャーハンを頼みました。メカニックの人がとりに行ってくれたんだけど、持ってきてくれたチャーハンの量を多いこと。(この辺では5年前に稲作が始まったそうです)とても食べられなからって取り皿に分けて残そうとすると、モーテルで食べなさいって。なんて優しいんだろう。
食事を終えて、出発する前に、そうだお金を払わなきゃって。さっき工具を借りて、切れていたランプも交換したし。Estelleにいうと、いいから気をつけて旅を続けてってHugしながら言ってくれました。本当に困っているときに貰った。とってもおっきなあったかい気持ちでした。涙腺が緩みました。
Jerryの運転でCaoe Girardeuに向かいました。車の中でいろいろ話をしました。彼は蚊やハエを取ってくれる鳥の小屋を作って売っていました。薬を使うわけではないので、かなり好調な売れ行きみたいです。ずいぶん遠くまで運んでくれました。INT55を降りてからもけっこうあります。まずバイクを工場の裏に下ろして、荷物をトラックに積み替えました。バイクにつけてたGAS3ガロンはお礼にトラックに入れました(御礼にもならないんだけど、気持ちで)。
 その後スタンドに行って僕の食料を仕入れて、モーテルに行きました。スタンドの人に安いモーテルを聞いてくれていたので、すぐに見つかりました。しかも,モーテルに着いたらちょっと待ってろって、帰って来て、値切るからなって。受付に行くと値切ってくれて、なんと一泊税込みで30ドル、あんまりテントと変わりません。チェックインを済ませると部屋まで荷物を運んでくれました。じゃ気をつけてな。ありがとう。別れを言ってはっと気づきました。ちょっと待って。日本画の絵葉書をあげました。そして本当にさよならって言うと笑顔で、片手を挙げてトラックは走っていきました。
明日、クラッチを開けてみないと、どのくらいここにいるか分からないけど、今日は極度の緊張の後に訪れた、あったかくって、やさしい気持ちの余韻を感じていたい。
【写真説明】
上から
「工場でメカニックと台車に詰まれたトライク」
「車につなげるために表に運ばれるトライク」
「Estelleおばさん」
「店の様子」
「ディーラーの前でJerryと」

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画像は説明を別記しましたので、ALT属性には何も記載してありません。また、諸事情とリンク先にテキスト情報が無いため、拡大画像に直接リンクを張ってあります。